ネットニュースを真面目にツッコんでみた
- kei miyauchi

- 2020年10月12日
- 読了時間: 5分
某G社という出版社のネットニュースをちょくちょく見かけます。
相続税関係の記事が上がってくるのですが、そのなかで
「本連載は2016年10月9日刊行の書籍(中略)抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承下さい」
というのがありました。
なるほど、じゃあ最新の内容でツッコんでくれるわ!
まず、話の概要
・相続対策で建築会社が鉄筋コンクリート造のマンションの建築を提案してきた
・場所は東京近郊のJR駅から徒歩12分
・当初の見込み年間収入は2,160万円
・建築総費用は1億7500万円
・全額借入、金利は1.6%
・金利リスクを考慮していないことを問題視している
・実際は完成直後から空室があり、収入が大きく見込を下回った
・記事においては建設会社の提案を鵜呑みにしたことが失敗を招いたとし、「経営者マインドを持て」と締めている。
じゃあツッコんで行きます。
① 利回り高すぎ
表面利回りが12.3%である。
2016年刊行の書籍ということは、事例はさらに以前と思うので、少なくとも2015年以前の話だと思われる。
※その時点で最新とさらにかけ離れすぎと思うが。
2015年に私は独立したので、2014年までの新築マンションのシミュレーションというのは良く見ていた。(建築会社に同行依頼受けることも多かったので)
2012年ぐらいの時点で、表面利回りを10%超えるのは無理と建築会社の人間が言っていた。
建築単価は年毎に変動があるが、それでも少しづつ増加していく傾向があるので、もっと利回りが低下しておかしくない。
ちなみに東京近郊ではなく、東京23区内であっても表面10%は難しいというレベルである。
まあそれでも2%であれば誤差の範囲と言うかもしれないが。
② 建築費低すぎ
国土交通省の統計を元に公表されている鉄筋コンクリート造.の標準的な建築価額が
平成27年 262.2千円/㎡
平成26年 276.2千円/㎡
平成25年 258.7千円/㎡
である。
記事によると15坪の部屋が12部屋とのことなので、最低で594㎡(実際は共用部があるのでもっとあるはず)
そうすると
平成27年 1億5,574万円
平成26年 1億6,406万円
平成25年 1億5,366万円
である。
これはあくまで建物本体の価額であり、実際は給排水や電気設備の工賃が追加される。
※いわゆる3:7の「7」部分の金額である。
記事によれば「建築総費用」とのことなので、外構や登記費用も含めての金額が1億7,500万円とのことだが、いささか低いのではないか?
建築費が低ければ利回りは高くなるわけなので、①の話と連動するわけだが、「デザイナーズマンション」という話とは噛み合わない。
③ 金利リスクは考慮すべきなのか?
記事においては金利変動のリスクを考慮していないことを問題としている。
ただ、住宅ローンの変動金利は2009年から現在までまったく増加していない。
以前に住宅ローンアドバイザーの講習で、「ローンの提案に際しては金利が4%まで上がる可能性について伝えること」とあったが、この根拠は「過去20年の金利変動において最も高い利率が4%だから」というところにある。
金利変動が全く無いとは言わないが、4%まで金利が上がっても成り立つ建築プランなど存在しないのではないか?
そもそも建築費の調達方法まで建築会社がフォローすべきかという話があり、せいぜい銀行を紹介する程度ではないだろうか?
紹介した後は銀行の責任のような気がする。
※「オーナー本人が危機意識を持つべきだ」という意味であれば、激しく同意する。
④ 建築そのものは失敗だったのか?
記事においては1年目は満室稼働できなかったとあるが、2年目の収入は年間1700万円としている。
そうすると、利回りとしては並程度のものは実現出来ていることになる。
もちろんこの収入が耐用年数に渡って維持出来るとは思わないが、並程度の賃料減少で推移するならば借入金の返済に支障は無いのでは無いかと思う。
建築により相続税が大きく減少していると思われるわけで、失敗と断じるにはまだ早い気がする。
⑤ 失敗している可能性は有り得る
東京近郊のJR駅というと、勝手に船橋とかを想像してしまうが(「近郊」ってどこまでかって話にもなるが)、都心から1時間以上離れると、農家の方々が相続対策でアパマン建築というパターンが多くなり過ぎたせいで、供給過剰が起きているケースはある。
※実際に見たエリアだと勝田台とか、飯能とかは結構空室で苦しむオーナーさんがいた。
⑥ 相続対策アパマン建築の誤解
大体この手の記事は、「相続税を減らすために借金してアパマン建築したが、結果的に収支が悪化して相続税以上に負担が増えた」的な事例を紹介していることが多い。
確かにそのパターンは有り得るのだが(特に既に挙げたエリアで近い状況は実際あった)、ここにちょっと誤解がある。
彼等(オーナー)は「相続税を減らしたい」ということ以上に、「引き継いだ土地を手放さずに乗り切りたい」という思いがあるのだ。
仮にこの手の事例で、アパマン建築しなかった場合どうするのかというと、「建築せずに土地を処分すれば良い」という話になる。
そもそもそれで解決して良い話ならそうしているのだ。
「土地を手放さないでなんとかする」となると、「農業を続ける」か「土地に稼いでもらってなんとかする」しかない。
固定資産税も馬鹿にならない金額になるが、アパマンを建築することで住宅軽減の対象になる。
もはや土地を守りたい彼らにとっては「We have No choice」なのだ。
そういう意味では失敗ではないケースはある。
⑦ まとめ
アパマン建築そのものが悪では無く、様々な事情があることは伝えたい。(もちろん元の記事もアパマン建築を悪と断じていないが)
当然、計画的に物事を進めるのが重要なのは異論が無い。(というか何であってもそうだろう)
ご利用は計画的にということだろう。




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